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第8回はとなび「終末期を見据えた人生会議 〜アドバンスケアプランニング〜」

      2025/05/22


"はとなび" とは?https://hatogaoka-dc.jp/はとなび



講師紹介

ご多忙の中“はとなび”第8回の講師を引き受けてくださったのは、北海道中央労災病院で緩和ケア認定看護師としてご活躍されている是廣由美子氏です。

美唄労災看護専門学校卒業後、岩見沢労災病院(現北海道中央労災病院)に入職されます。
2013年に緩和ケア認定看護師資格を取得されてからは、北海道中央労災病院 緩和ケアチームの専従看護師として緩和ケアに従事され、 翌年より同施設が主催するがんサロンも運営されています。2016年に医療リンパドレナージ上級セラピスト資格を取得、2021年には遺体感染管理士資格を取得されるなど、多岐に渡りご活躍されています。

この度は、緩和ケア認定看護師の見地から『終末期を見据えた人生会議~アドバンスケアプランニング~』をご講演いただきました。 

もしもの時に備え、自分が希望する医療ケアを家族や大切な人に伝えておくことの重要性についての貴重なご講演でした。

この記事では、その一部をご紹介させていただきます。

 

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)= 人生会議

ACPとは

皆さんはACP(アドバンスケアプランニング)、または人生会議という言葉を知っていますか?

あまり聞きなれない言葉かと思います。一般国民3000人への調査では、約72%の人が知らないという回答でした。

一方で、医師・看護師・介護職員の認知度は40~50%と、医療・介護の分野で注目し始めている言葉です。

アドバンスケアプランニング(ACP:Advance Care Planning)=人生会議 とは、
もしも自分の意志を伝えられなくなったときのために、本人が望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。

実に、終末期患者の約7割は自分の意思を伝えられないと言われています

本人の意思を聞き出せない状況では、その意思決定、決断は家族や近しい方がすることになります。そのとき、事前に本人とACP(=人生会議)をしておくことで医療ケアの方針を決める際の葛藤を少なくすることが出来ます。

「最悪を想定し、最善を尽くす」
緩和ケアの世界で言われる言葉です。

 

また、ACP(=人生会議)の定義を厚生労働省、日本医師会、日本老年医学会はそれぞれ以下のように定めています。

厚生労働省
・人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス(厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン解説集 2018)

日本医師会
・将来の変化に備え、勝利の医療及びケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合い、患者さんの意思決定を支援するプロセス(日本医師会:終末期医療 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える 2018)

日本老年医学会
・ACPは将来の医療・ケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセスである(日本老年医学会:ACP推進に関する提言 2019)

“ACP”が生まれた経緯

始まりは1960年代のアメリカ

生命維持を目的とした医療技術の急激な進歩があり、以前は命を落としていた状況でも救命可能になりました。

医療者が考える最善(=救命・延命)が第一の時代で、

患者・家族の意向は軽視される傾向でした。

それから少し時間が経った1980年代にある事例が起こります

 

ナンシー・クルーザンの事例(1980年代)

20代アメリカ人女性が交通事故で遷延性意識障害(植物状態)になってしまいます。人工栄養によって生命維持は図られていました。
それから3年後、両親が人工栄養の中止を病院に求めましたが、主治医・病院側から拒否されてしまいます。
そこで両親は裁判を起こしました。
結果は、事故から7年後(裁判から4年後)連邦最高裁で人工栄養の中止を認め、両親側の勝訴となりました。

【判決のキモ】
代理意思決定者の“意思決定”の際、「患者の明確な意向が確認できること」が求められた

以下の証言によって、患者の明確な意向が認められた

• 複数の友人たちの証言
「植物状態になって経管栄養受けて生きながらえたくないと言っていた」そしてこれは聞いていたタイミングも別々であった。

• 学生の時、障害児学級で数か月間アルバイトでお世話をしていた「自分はこういう状況で生きていくのは嫌だ」と具体的にイメージが出来ている状況で、且つそれを事前に周囲に表明していた。親だけでなく、基本的に利害関係のない友人も同じ証言をした

 

 

事前に意思を、繰り返し表明しておくことが重要

ナンシークルーザンの事例より、アメリカは文書での意志表明の法律を設けたが、
・あまり文書作成されない(4割程度)
・作成していても医療機関に正しく引き継がれない
・引き継がれても内容に反する治療が行われる
などの理由で、うまく機能しませんでした。

さらに、文書だけだと
・選択・希望は状況により変化する可能性が大きく、その時点の選択が今も同じかわからない
・なぜそのような判断をしたのか、理由や想いがわからない

という問題点があります。

そのため、本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合い、意思決定を支援する、ACPが必要なのです。

人の意思は変わるので、ACPを一度きりではなく繰り返し行うことが重要だと、是廣氏は強調されました。

 

 

医学的な最善が"本人にとっての最善"とは限らない


医学的最善の治療によって、救命・延命できる可能性があります。

しかし、治療には時間やお金などの様々な負担が発生します。もちろん苦痛を伴うものもあります。
そういったことと、苦痛が少ないこと・家族と出来るだけ一緒にいること・仕事をすること・自分の役割を果たすこと

どちらが本人にとって重要なのかを知るために、ACPは必要です。

 

 

日本人が大切にしていること


日本人の傾向についてもご紹介してくださいました。

そして、大切にした項目だけでなく、それを選んだ理由まで聞いておくことが重要です

 

 

人の希望は変わる

人の気持ちは時間と共に変わるため、繰り返しACPを行うことが必要です

 

 

人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン

1 . ご 本 人 の 意 思 決 定 を基 本 と し 尊 重 す る こ と 

2 . 医 師 の み で な く 、チ ー ム で 方 針 の 検 討 ・判 断 を す る こ と

3 . 痛 み や 不 快 な 症 状 をや わ ら げ る ケ ア を 充 実さ せ る こ と

元々は病院での想定であったが、2018年の改訂では病院以外の場所での進め方についてもガイドラインが示されました。

 

 

人生の最終段階の意思決定 4STEP

STEP1 本人の意思決定する力を考える

本人の意思を確認できるか、出来ない場合、家族等が本人の意思を推定ができるかでフローチャートは変わっていきます。

本人の意思が確認できる場合はSTEP2へ進みます
本人の意思が確認できない場合はSTEP3へ進みます

 

STEP2 本人の意思が確認できる

本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた本人の意思決定により、医療・ケアの方針を決定します

 

STEP3 本人の意思確認ができない

本人の推定意思を尊重し、本人にとって最善の方針をとる
ご家族や、親しい友人、近所の方と話して方針を決めていく。
「本人だったらどうするか」からブレずに決定していく。

 

STEP4 本人の意思を推定できる人がいない

本人にとって最善の方針を、医療・ケアチームで慎重に判断していく

 

 

ACPの進め方

1.自分の大切にしていることは何かを考えてみましょう

2.信頼できる人は誰か考えてみましょう

3.話し合い、自分の意思を伝えてみましょう

 

とはいっても、まっさらな白紙に自分の大切にしていることを書き出していくのは簡単ではありません。
また、自分の意思を伝えることもハードルが高いと感じる方も多いと思います。

そんな時は、「もしばなゲーム」をACPのツールとして活用してみるのが良いかもしれません。

 

 

  もしバナゲーム

もしバナゲームとは

もしバナゲームは、あなたと大切な誰かがそんな「もしものための話し合い(=もしバナ)」をする、そのきっかけを作るためのカードゲームです。

1人でも、2人でも、またもっと多くの人数でもゲームをすることができます。
1セットには36枚のカードが入っています。
そのうち35枚には、重病のときや死の間際に「大事なこと」として人がよく口にする言葉が書いてあります。
たとえば、「どのようにケアして欲しいか」、「誰にそばにいて欲しいか」、という内容です。

人生の最期にどう在りたいかを「もしバナゲーム」を通じて、人生において大切な「価値観」や、自分自身の「あり方」について様々な気づきを得ることが出来ます

 

もしバナゲームonline版ソリティア

もしバナゲームonline版ソリティアとは、カードがなくても出来1人用のゲームです。
自分にとって何が重要なのか、なぜそれが重要なのかを考え、理解するきっかけとなります。

やり方は簡単です
1. 36枚のカードの中からルールに従い、自分にとって重要な10枚を選択する
なぜその10枚が自分にとってのトップ10なのか理由を考えてみる
2.  選ばなかったカードについても、なぜ選ばなかったのか、その理由を考えてみる
3. そして、時間を作って、あなたの選択について信頼できる人と話し合ってみましょう

誰でも無料ですぐに行うことが出来ます。是非この機会にやってみませんか?

もしバナゲームonline版ソリティアはこちら

 

ソリティアで自分の大切にしたいものがわかったら、次はそれを信頼できる人に伝えてみましょう。

また、もしバナゲームは2人用のルールと、4人用のルールがあります。ゲームの力を借りることで気軽に楽しくACPを進めることができるかもしれません。

もしバナゲームの詳細はこちら

 

最期までその人らしく生きられるように

軸になるのは、常に「本人にとっての最善」

特定の職種のみならず、医療・ケアチームとして「本人にとっての最善」を検討します。

「本人にとっての最善」を中心に、多職種それぞれの視点から意見を出し、合意で方針決定します。

「意思決定とは、ある状況において複数の代替案から最善の解を求めようとする人間の認知的行為である」simon;1047

自分も家族も「これでよかった」と思えるように、多職種の視点で総合的に本人にとっての最善の解を求めること。
そして、日常の中で「自分にとっての最善」を繰り返し伝え合うことが重要なのです。

 

 

地域のどこにいても、本人の意向が医療やケアに反映されるための課題

「と き ど き 入 院 、 ほ ぼ 在 宅 」 と い う 文 脈 の 中 で、 A C P プ ロ セ ス の 共 有 に は 課 題 が あ る

● 本 人 を 取 り 巻 く 多 機 関 の 医 療 ・ 介 護 従 事 者
→ 機 関 間 の 情 報 分 断 が 未 だ 大 き な 課 題
→ こ れ ま で 積 み 重 ね て き た A C P ( 人 生 会 議 )プ ロ セ ス が 、 機 関 を 越 え て 共 有 さ れ る に はど う し た ら い い の か ?


● 人 の 気 持 ち は 揺 れ る ・ 変 わ る
→ 変 化 す る 意 向 に 関 す る 情 報 を タ イ ム リ ー に 共有 す る に は ど う し た ら よ い か ?
→ 今 後 、 独 居 高 齢 者 も 増 え る た め 、 平 時 か ら の情 報 共 有 の 仕 組 み が 必 要

 

 

終わりに

「あなたはあなたのままで大切です.

あなたの人生の最後の瞬間まで大切な人です.

私達はあなたが安らかに死を迎えられるだけでなく、最後まで生きられるように、最善を尽くします.」

― シシリ-・ソンダース -


ご講演の最後に、是廣氏が大切にしている言葉をご紹介してくださいました。
シシリー・ソンダース氏は、緩和ケア・近代ホスピス母と呼ばれ、初めはナース、次にソーシャルワーカーを経てドクターになったイギリスの医師です。
また、がん性疼痛に対して医療用麻薬を初めて使った医師でもあります。
「安らかに死を迎えるだけでなく、最後まで生きる」という表現に、“生きる”という言葉の意味を考えさせられます。

「意思決定支援・ACP(人生会議)は、実臨床・日常ケアの中にある」
“最後までその人らしく生きられるための支援”を日々行われている是廣氏は、その重要性を強調されました。

 

謝辞

是廣氏の「終末期を見据えた人生会議~アドバンスケアプランニング~」のご講演の一部をご紹介させていただきました。

より多くの人々が自分らしい生き方を全うし、満足のいく人生の終末期を迎えることができるよう、当院もACPについての学びを継続し、その重要性を伝え広めていきたいと思います。

地域連携をより一層強めるパートナーとして、今後とも宜しく御願い申し上げます。

この度、鳩が丘歯科クリニックの新たな挑戦である “はとなび” にお力添えいただき、また、素晴らしいご講演をいただいた是廣由美子氏に、深く感謝申し上げます。

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