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第九回はとなび「 生活期の理学療法について ~住み慣れたまちで元気に暮らすために~」

      2024/10/10


"はとなび" とは?https://hatogaoka-dc.jp/はとなび



講師紹介

ご多忙の中“はとなび”第九回の講師を引き受けてくださったのは、介護老人保健施設 北翔館の理学療法士である後藤さつき氏です。
「 生活期の理学療法について ~住み慣れたまちで元気に暮らすために~」というテーマでご講演いただきました。
この記事ではその一部をご紹介させていただきます。

後藤氏は岩見沢出身で、札幌医科大学 保健医療学部 理学療法学科を卒業後、岩見沢整形外科内科病院(現:岩見沢北翔会病院)入職されます。その後、北翔館に異動となり現在に至ります。

昨年9月には岩見沢初となる訪問リハビリが開設され、現在責任者を務めていらっしゃいます。

地域理学療法の認定理学療法士、そして認知症ケア専門士等の資格を保有されており、今回のテーマである「住み慣れたまちで元気に暮らすため」の支援のプロフェッショナルです。

また、北海道リハビリテーション専門職協会(HARP)に所属されており、南空知地区長、岩見沢市主担当として活動されています。

北海道リハビリテーション専門職協会(略称:HARP)は、北海道内で活動するリハビリテーション専門職を対象とした団体です。この協会は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、リハビリテーション分野の専門職が集まり、相互の連携と情報交換を促進し、専門職としての質の向上を目指しています。

令和4年3月31日時点での各会員数は以下の通りです。
北海道理学療法士会 6,779名
北海道作業療法士会 3,170名
北海道言語聴覚士会    646名

 

理学療法士とは

理学療法士は、病気やけが、高齢、障害などによって運動機能が低下した人々に対して、運動機能の維持や改善を目指して治療を行う専門家です。理学療法は、運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いることで、患者の身体機能の回復や生活の質の向上を図ります。

「理学療法士及び作業療法士法」第2条では、理学療法士の役割について次のように定義しています。「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、また電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること」。
このように、理学療法士は多様な治療方法を駆使し、患者の自立を支援し、日常生活の質を高めるために貢献しています。

 

リハビリテーションの語源

リハビリテーション(英語: rehabilitation)の語源は、ラテン語の「re(再び)」と「habilis(適した)」に由来しています。これらの言葉が組み合わさることで、「再び適した状態になること」や「本来あるべき状態への回復」という意味を持ちます。このように、リハビリテーションは失われた機能や能力を取り戻し、再び日常生活を快適に送ることを目指す過程を表しています。

また、元々機能を獲得していない場合には、「ハビリテーション(habilitation)」という言葉が使われます。
ハビリテーションは、「その人がもっている能力を可能な限り伸ばし、社会に適応できるよう支援すること」を意味します。

 

理学療法の対象

理学療法の対象は、運動機能が低下したすべての人々です。その原因は問いません。病気やけが、高齢による体力の低下、手術後の回復など、さまざまな理由で運動機能が低下した方が対象となります。

近年では、高齢者の予防対策としての運動機能低下の予防、メタボリックシンドロームの予防、さらにはスポーツ分野でのパフォーマンス向上など、健康な人々に対する理学療法の適用も広がっています。さらに、理学療法士はその専門性を活かし、福祉用具の適用相談や住宅改修相談など、個々の生活環境に応じた支援も行っています。

 

 

理学療法の目指すもの

理学療法の直接的な目的は、運動機能の回復です。しかし、その先には日常生活動作(ADL)の改善があり、最終的にはQOL(生活の質)の向上を目指します。病気やけが、高齢などさまざまな原因で寝返り、起き上がり、座る、立ち上がる、歩くといった基本的な動作が難しくなると、自力でトイレに行けなくなったり、着替えや食事ができなくなったり、外出が難しくなるなど、日常生活に多くの不便が生じます。

こうした動作を誰の手も借りずに行いたいと願うのは、ごく自然なことです。そのため、日常生活動作の改善はQOL向上にとって欠かせない要素です。
理学療法では、たとえ病気や障害があっても、住み慣れた街で自分らしく暮らしたいという一人ひとりの思いを大切にし、その実現をサポートします。
理学療法士は、患者さんの「自分らしい生活」を取り戻すお手伝いをする職業なのです。

 

理学療法を受ける方法

理学療法を受けるための方法は、状況に応じてさまざまです。以下のケースごとに方法を紹介します。

 

入院中・通院中の方

病院や診療所(医院、クリニック)に入院・通院中の場合、まずは主治医や担当医にご相談ください。医師が理学療法の必要性を判断し、必要であれば理学療法科(リハビリテーション科)で治療を受けることができます。

 

ご自宅で生活する高齢者の方

手足に障害を抱えながらもご自宅で生活し、運動機能の維持・向上や人との交流、日中の余暇活動、住宅改修を希望される方は、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションサービスの利用が考えられます。
この場合、かかりつけ医やケアマネージャー、市町村の介護保険課にご相談ください。

https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/kurashi/kenko_iryo_fukushi/koreisha_kaigo/4/2/6089.html

 

高齢で身体機能の低下が心配な方

身体機能の低下を未然に防ぐための介護予防事業に関心がある場合、またはその適用を受けたい場合は、お住まいの市町村の老人保健担当課、または地域包括支援センターにお問い合わせください。

https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/kurashi/kenko_iryo_fukushi/koreisha_kaigo/4/2/6089.html

 

お子様の発達が心配な方

お子様の発達について心配がある場合は、乳幼児健診で相談したり、市町村の保健センターや保健師にご相談ください。必要に応じて、理学療法が紹介されることがあります。

https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/soshiki/kodomoka/kosodate/8282.html

 

障害をお持ちの方

障害者入所施設や通所(通園)施設での理学療法をご希望の場合は、福祉事務所にご相談ください。

https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/kurashi/kenko_iryo_fukushi/shogaishashien/index.html

 

 

地域理学療法とは

地域理学療法は、人々が地域社会で主体的に生活できるよう、動作や活動に多面的に働きかけることを目的とした学問です。地域のニーズに応じた理学療法を提供し、健康と生活の質の向上を支援します。具体的には、以下の三つの領域に基づいて展開されます。

 

1. 老年学を基盤とする領域

この領域では、高齢者の健康と機能の維持・向上に焦点を当てます。
加齢に伴う身体機能の評価や、それに基づいた理学療法の提供、介護予防、転倒予防などが含まれます。高齢者ができるだけ自立して生活できるよう、身体機能を維持するための支援を行います。

 

2. 保健活動を基盤とする領域

健康増進や生活習慣病予防、高齢者や女性の健康管理を目的とした取り組みがこの領域に含まれます。
集団の健康状態を評価し、地域全体の健康づくりを支援するシステムを構築します。地域全体の健康意識を高め、予防医療の重要性を伝える役割を担います。

 

3. 在宅支援領域

在宅支援領域では、以下のような活動が行われます。

  1. 通所リハビリテーション:リハビリテーション施設に通い、日常生活動作の改善や社会交流を促進します。

  2. 施設リハビリテーション:長期的なケアが必要な方々に対し、施設内でのリハビリを提供し、生活の質を維持・向上させます。

  3. 就労・就学・社会参加支援:障害や病気を持つ人々が仕事や学校、スポーツなどに参加できるよう、支援を行います。また、彼らの権利を擁護し、社会の一員としての参加を促進します。

  4. 制度的支援:医療・介護・福祉制度や地域ケアシステムの中で活動し、地域全体のケア体制の向上に貢献します。

  5. 生活環境整備:住環境の評価と整備、福祉用具の提供、そして住みやすいまちづくりのための政策提言などを行います。これにより、誰もが安全で快適に暮らせる環境を整えることを目指します。


地域理学療法は、個人の生活の質を高めるだけでなく、地域全体の健康と福祉を向上させるための重要な役割を果たしています。理学療法士は、人々が地域社会で自分らしく生活できるよう支援し、地域の健康づくりに貢献する職業です。

 

 



高齢リハビリの3つのモデル

高齢者リハビリテーションでは、高齢者の健康と生活の質を向上させるために、特性に応じたリハビリテーションモデルが用いられます。
「脳卒中モデル」、「廃用症候群モデル」、「認知症モデル」の3つの代表的なモデルについて説明します。

 

1. 脳卒中モデル

 

脳卒中モデルは、脳梗塞や脳出血大腿骨の頸部骨折など急激に生活機能が低下した方が、急性期・回復期を経て地域リハビリテーションに入っていくような流れをとるモデルです。

脳卒中モデルでは、早期リハビリテーションの開始が重要とされ、急性期から回復期、維持期までの一貫したケアが提供されます。

 

 

2. 廃用症候群モデル

廃用症候群モデル慢性疾患や変形性関節症など、「活動」「参加」を妨げる要因があり、閉じこもりがちな生活が続くことに起因して、徐々に生活機能が低下します。
生活機能が軽度な時期からリハビリテーションを開始します。
慢性疾患や変形性関節症などは徐々に症状が進行していくので、どうしても少しずつ生活機能は低下していきます。
例えば変形性関節症であれば痛みの増強などで生活機能が一時的に落ちた時に(図でガクンと落ちているところ)何もしなければグラフの下の線のように機能がどんどん低下してしまいますが、↑のところでリハ介入を行うことで、上の線のように、機能低下の仕方をゆるやかにしていくというようなモデルです。

 

 

3. 認知症モデル

認知症モデルは、認知症を持つ高齢者を対象としたリハビリテーションのモデルです。
環境への変化の対応が難しいため、継続した生活やこれまで慣れ親しんだ人間関係の中での介護がもとめられます。

  • 認知機能の維持・改善: 認知機能の低下を抑えるため、記憶訓練や問題解決能力を養うための活動を取り入れます。例えば、パズルや計算、会話を通じた認知訓練を行います。

  • 日常生活動作の支援: 認知症による混乱や記憶障害がある中でも、自分でできることを増やすために、日常生活動作の訓練を行います。食事や着替え、トイレ動作などの支援が含まれます。

  • 環境の調整: 認知症の症状を悪化させないために、居住環境を整え、安全で安心できる環境を提供します。必要に応じて福祉用具を導入し、家庭内の危険を最小限にします。

  • 家族支援: 認知症のご利用者の家族に対しても、適切な介護方法の指導や心理的な支援を行い、介護負担の軽減を図ります。

認知症モデルは、ご利用者の残存能力を活用しながら生活の質を維持・向上させることを目標としています。

 

 

4つのステージごとの理学療法士の役割

1. 急性期

急性期のリハビリテーションの主な目的は、「廃用症候群」の防止・軽減です。病気やけがの治療が開始されたばかりの段階で体を動かすことで、長期間の安静による筋力低下や関節の硬直を防ぎます。また、急性期での適切なリハビリテーションは、次の回復期にスムーズに移行するための重要な橋渡しとなります。急性期はまだ病状が安定していないことが多く、医療機関での実施が基本となります。

 

2. 回復期

急性期リハビリテーションの後に行うのが回復期リハビリテーションです。このステージでは、治療の最優先が終わり、利用者の回復能力が高まる時期にあたります。回復期リハビリテーションでは、日常生活動作(ADL)の練習を中心に、より実践的で密度の高いリハビリテーションを行います。国内各所に「回復期リハビリ病棟」という専門的な医療機関が存在し、ここで集中的なリハビリテーションが行われます。このステージは疾患によって入院日数に制限があり、その期間内で最大限の回復を目指します。

 

3. 生活期(維持期)

生活期は、急性期と回復期を経て症状や障害の状態が安定した後の時期です。このステージでは、運動機能や日常生活動作を維持・改善し、再び悪化しないようにすることが目的です。生活期のリハビリテーションでは、家庭での自立生活を支援するために、リハビリテーションプログラムが継続的に提供されます。ここからは介護保険の対象となり、在宅サービスや施設でのケアが中心となります。

 

4. 終末期

終末期は、病気や加齢により近い将来の死が避けられない状況にある方々のための時期です。この段階での理学療法士の役割は、患者の身体的な苦痛を軽減し、生活の質(QOL)を向上させることに重点を置きます。

  • QOD(Quality of Death/Dying)の向上: 終末期では、ご利用者が安らかな最期を迎えられるよう、快適さを追求します。ご利用者のニーズや希望に応じた個別のケアを提供することで、患者が自分らしく過ごせる時間を大切にします。

  • 関節拘縮の予防: 終末期のケアでは、家族へのサポートも重要な役割です。過度に関節拘縮(変形)がある状態で亡くなると、遺体を棺に収める際に関節を外さなければならない場合があります。ご遺体の関節を外すというのは家族にとってショッキングなことが多いですので、そうならないために理学療法士が生前から関節のケアを行い、関節拘縮を最小限にするように支援します。これにより、家族が最期の別れを安らかな気持ちで迎えられるよう支援します。

 

生活期の理学療法について

今回のテーマである生活期の理学療法について、さらに詳しくご紹介します

① 退院後(主に直後)の在宅生活の安定化

病院を退院した直後は、入院前にできていたことが病気やけがの影響でうまくできなくなることがあります。このギャップによって、ご利用者は日常生活で不安を感じることが増えます。例えば、足がうまく上がらずに転倒しそうになったり、自由に外出できなくなったり、友人と気軽に会えなくなったりします。

生活期リハビリテーションでは、まずご利用者の生活を安定させることを優先します。具体的には、入院中に学んだ「立って歩く」「トイレに行く」「入浴する」「段差を越えて外出する」といった基本的な日常生活動作を安定させる支援を行います。これにより、ご利用者が安心して自宅で生活を送るための基盤を作ります。

 

② 在宅生活の継続支援

在宅生活が安定したら、その生活が継続できるように支援します。この段階では、「モニタリング」や「評価」を通じて、ご利用者の筋力や体力が低下していないか、精神面に変化がないかを確認します。ご利用者の身体機能や認知機能を定期的に評価し、必要に応じて早期に対応することで、病状の悪化や重度化を防ぐことができます。

 

③ 活動と参加支援

在宅生活が安定した後は、ご利用者が「その人らしい生活」を再構築できるよう支援します。これを「活動と参加支援」と呼びます。ご利用者にとっての「役割」や「生きがい」、例えば家事、趣味、仕事、地域の役員、ボランティア活動、宗教活動などを取り戻すことが目標です。病気やけがによって一度失われた役割や生きがいを再び取り戻し、入院中に回復した機能と結びつけていく作業を行います。この際、ご利用者の能力に合った安全な活動を選び、ご利用者が満足感を得られるように支援します。

 

④ 人としての尊厳を全うすることを援助

たとえ重度の障害を負ったり、超高齢で身体の自由が利かなくなったとしても、人間らしく生活する権利は重要です。生活期リハビリテーションでは、ご利用者が可能な範囲で身体を動かし、寝たきりになることを防ぐことを大切にします。ご利用者が最後まで尊厳を持って生活できるように、理学療法士はご利用者の意欲や希望に寄り添い、できる限り自立した生活を支援します。



 

ICF(国際生活機能分類)


ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)とは、世界保健機関(WHO)が策定した分類システムで、生活機能と障害の概念を統合的に捉え、人々の健康とその健康が生活にどのように影響を与えるかを包括的に理解するためのフレームワークです。ICFは、健康状態を「機能」と「障害」という2つの側面から評価し、生活全体の視点から人の状態を捉えます。

 

ICFの構成要素

ICFは以下の主要な構成要素から成り立っています。

  1. 心身機能・構造: 身体や心の働き(例:筋力、認知機能)と、それに関連する身体の構造(例:骨、臓器など)を指します。生命レベルとも言えます

  2. 活動: 個人が行う具体的な行動や課題(例:歩行、食事、入浴)です。これには、その行動がどの程度うまく行えるかという「活動制限」も含まれます。生活レベルとも言えます

  3. 参加: 社会生活や役割に参加する能力(例:仕事、家庭での役割、地域社会への参加)を指し、社会生活においてどの程度参加できているかを表します。「参加制約」は、この社会的参加がどの程度制限されているかを示します。人生レベルとも言えます

  4. 環境因子: 個人の生活や健康に影響を与える外的な要因(例:家族、職場、制度、社会的な支援)です。これには、物理的な環境だけでなく、社会的なサポートや政策も含まれます。

  5. 個人因子: 年齢、性別、教育、生活経験、ライフスタイルなど、その人固有の背景や属性を指します。

環境因子としての支援者の役割

ICFの重要な特徴の一つは、すべての要素が相互に関連し合っているという点です。つまり、心身機能や活動、参加のレベルは、環境因子と個人因子に大きく影響されます。ここで注目すべきは、環境因子が変わることで、個人の機能や参加の状況も改善される可能性があるということです。

例えば、以下のような支援が環境因子として重要な役割を果たします。

  • 家族や友人のサポート: 家族や友人の理解と支援があることで、ご利用者の精神的な安定感や社会参加の意欲が向上します。

  • 医療やリハビリテーションの専門職の関与: 理学療法士や作業療法士、看護師などの専門職が適切な支援を提供することで、ご利用者の身体機能が改善し、日常生活の質が向上します。

  • 適切な福祉サービスや政策の提供: 介護サービス、障害者支援サービス、交通のバリアフリー化など、制度や社会的支援が整っていることで、患者は社会参加がしやすくなります。

ICFの意義

ICFは、単に障害や病気を診断するだけでなく、個人の生活全体を評価し、改善するための重要なツールです。ICFを用いることで、支援者は利用者の生活の質を向上させるためにどのように環境を調整すべきかを具体的に考えることができるようになります。
利用者の健康状態を改善するためには、単に医学的な治療だけでなく、社会的、環境的なサポートが不可欠であり、これがICFの包括的なアプローチの意義だと考えます。

 

老健(介護老人保健施設)での理学療法

老健(介護老人保健施設)とは

老健、正式には介護老人保健施設とは、介護が必要な高齢者が自立した生活を取り戻し、家庭への復帰を目指すための施設です。医師による医学的管理のもと、看護や介護、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションが提供されます。これに加え、栄養管理や食事の提供、入浴などの日常生活サービスも行われます。これらのケアサービスは、利用者一人ひとりの状態や目標に合わせて、専門スタッフが計画し実施します。

 

利用対象者

老健は、介護保険法に基づく施設であり、利用できるのは要介護認定を受けた高齢者です。具体的には、病状が安定しており、入院治療の必要がない要介護度1~5の方が対象です。これらの方々は、家庭での生活に戻るための準備として、老健でリハビリテーションや日常生活のサポートを受ることが出来ます。

 

理学療法の役割

老健での理学療法は、高齢者の運動機能を維持・向上させ、日常生活動作の自立を支援する重要な役割を担っています。以下のような具体的なリハビリテーションが行われます。

  1. 個別リハビリテーション: 利用者それぞれの身体機能や目標に合わせた運動プログラムを作成し、歩行訓練や筋力トレーニング、バランス訓練などを行います。

  2. 集団リハビリテーション: 他の利用者と共に参加する集団活動を通じて、社会的交流を促進しながら身体機能を維持・向上させます。

  3. 日常生活動作訓練: 立ち上がり、着替え、食事、トイレ動作など、日常生活で必要な基本的な動作を訓練し、自宅での生活に必要な能力を高めます。

  4. 予防的アプローチ: 転倒予防や体力低下の防止を目的とした運動プログラムを実施し、高齢者の安全な生活をサポートします。

家庭復帰と在宅ケア支援

老健の大きな役割の一つが、利用者が自宅で安全に自立した生活を送れるよう支援することです。そのため、利用者が家庭復帰を目指す際には、理学療法士が自宅環境の調整や家族への指導も行います。また、在宅復帰後も継続的な支援が必要な場合、在宅リハビリテーションや訪問リハビリテーションと連携して、利用者の自立生活を支えます。

 

その他の支援体制

老健では、歯科医師や歯科衛生士が在籍していることもあります。口腔ケアや嚥下機能の改善も行われ、栄養状態の向上や誤嚥性肺炎の予防にも寄与します。

北翔館には歯科衛生士が一名在籍しており、歯科治療が必要な場合には当院鳩が丘歯科クリニックが訪問診療を行っています。

老健は、地域に開かれた施設として、利用者のニーズに応える質の高い介護サービスの提供を心がけており、介護予防を含む教育・啓発活動も行い、地域の在宅ケア支援の拠点として機能することを目指しています。
利用者や家族が安心して快適な日常生活を送れるよう、理学療法士を含む専門スタッフが総合的なサポートを提供します。

 

 

老健の使い方

介護老人保健施設(老健)では、高齢者が自立した生活を目指してさまざまなリハビリテーションサービスを提供しています。ここでは、老健の利用方法について説明します。

 

入所サービス

老健への入所は、家庭への復帰を目指す高齢者にとって、集中的なリハビリテーションを受けるための有効な選択肢です。特に、強化型以上の老健では、1回20分の個別リハビリテーションを週3回以上実施しています。入所後の最初の3か月間は「短期集中リハビリテーション」と呼ばれ、この期間にはリハビリを毎日行うことができ、加算も算定されます。後藤氏の勤務されている北翔館ではこの期間、週5日のリハビリを実施されています。

また、リハビリテーションだけでなく、生活全般において間接的な支援も行い、日常生活に必要なスキルを強化します。
後藤氏は、個別リハビリテーションよりもむしろ、間接的支援の方が重要だと教えてくださいました。
一日のなかでは個別リハビリ20分以外の時間の方がずっと長く、例えば移動を車いすにするか歩行にするかで活動量が格段に変わってきます。たとえば仮に20分一生懸命歩行練習をしたとしても、それ以外の時間基本寝ている、移動は車いすのみとなると機能が低下しまいます。
それよりも日中起きている時間を長くして、歩行可能な利用者様であれば短距離で
も歩行する方が身体機能は上がっていくと考えれれます。
ただし、ただ座っているだけだと姿勢が崩れてしまう、お尻が痛くなってしまうということもあるので、その時に理学
療法士がより良い姿勢をつくるための提案を行います。歩行についてもその方の能力を把握しているのは理学療法士です。たとえばトイレまでだったら一人で大丈夫、長距離になるとふらつきがでるので介助者について欲しいなどの情報をケアスタッフに共有することで、協力を得て日常生活の中に取り入れていきます。

また、特定の期間だけ老健に入所してリハビリを行うケースもあります。冬の間だけ利用するケースでは、雪の影響で外出が困難な地域に住む高齢者が、外出できない期間を老健でリハビリを受けることがあります。
また、介護者が農家の方の場合は、農繁期の介護が難しくなってしまうので、農繁期の間だけ老健へ入所される方もいます。

 

短期入所

短期入所は、ご家族や介護者の負担軽減や旅行などの息抜きのため、利用者が老健に1泊2日など、ご都合に合わせた必要日数を宿泊し、リハビリなどのサービスを受けられる介護サービスです。

 

通所リハビリテーション(デイケア)

通所リハビリテーション(デイケア)は、要介護者が老健や病院などの施設に通い、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門スタッフによるリハビリを受けられるサービスです。日中の一定時間を施設で過ごしながら、専門的なリハビリテーションを受けることで、身体機能の維持や改善を図ります。

通所リハビリのメリットの一つが、訪問リハビリよりもリハビリ機器が充実しているということです。訪問リハビリでは持ち歩ける物品に限りがあるためです。また、物品とスペースの関係で通所リハビリの方が機能評価をきちんと行うことができます。また、他者交流ができるというメリットもあります。

 

訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションは、理学療法士や作業療法士が利用者の自宅を訪問し、実際の生活環境に合わせたリハビリを行うサービスです。自宅でのリハビリを通じて、日常生活動作の改善や心身機能の維持を図ります。また、介護を行う家族へのアドバイスや相談も行い、家庭全体のサポートを提供します。

通所リハビリとの違いは、訪問リハビリが自宅で行われるため、実際の生活環境に即した練習ができることです。これにより、利用者が自宅での生活によりスムーズに適応できるようになります。

 

老健のサービスと支援

老健では、「今できること」をサポートし、工夫次第で「できるようになること」を提案することで、利用者の生活の質を向上させることを目指しています。超強化型老健として認定を受けるためには、在宅復帰率やベッド回転率、経管栄養の実施割合など、さまざまな条件を満たす必要があります。これらの基準をクリアすることで、より質の高いリハビリテーションと支援を提供することが可能になります。

 

 

 

岩見沢市のフレイル予防の取り組み

岩見沢市では、フレイル(虚弱)の予防を目的とした「通いの場」支援に力を入れています。市内約20箇所に設置された「通いの場」では、近隣の市民が集まり、健康体操などを通じて体力向上を目指す活動が行われています。

 

通いの場の運営

「通いの場」は地域包括支援センターが運営し、町内会と協力して自治運営を行っています。
市民が気軽に参加できるよう、地域のニーズに応じた支援が続けられています。


https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/material/files/group/1/2210_A3.pdf

 

HARP会員による支援

HARP会員が「通いの場」の健康体操会に参加し、体操の注意点についてや、より効果的な方法について助言を行います。加えて、介護予防に関する講和を行います。頻度としては1年に1度です。

 

健康維持とフレイル予防

「通いの場」に集まる人々は比較的元気な方が多く、社会的、身体的、精神的な側面からフレイル予防に取り組んでいます。
このような取り組みを通じて、岩見沢市は地域住民のQOL(生活の質)の向上を目指しています。

 

終わりに

後藤氏は最後に次のように締めくくられました。

要支援や要介護の状態になったとしても、その方の生活は続いていきます。
どのような状況になっても、その人らしく生活できるように、多職種が協力し合いながら支援していきたいと考えています。

また、予防に努めることで、その方が元気でいられる期間が長くなる可能性が高まります。私たちは予防の観点からも積極的に支援を行い、一人ひとりの生活の質を向上させるお手伝いをしていきたいと思います。

 

謝辞

後藤氏の「生活期の理学療法について ~住み慣れたまちで元気に暮らすために~」のご講演の一部をご紹介させていただきました。講演を通じて、介護予防の重要性だけでなく、要介護状態になってしまった後の支援においても、理学療法士の存在がいかに重要であるかを深く理解することができました。

私たちは、地域連携をより一層強めるパートナーとして、引き続きご支援いただけることを心から願っております。住み慣れた地域で、皆さまがいつまでも元気に暮らせるよう、共に取り組んでいきたいと考えています。

この度、鳩が丘歯科クリニックの “はとなび” にご協力いただき、また、貴重なご講演をいただいた後藤さつき氏に、心より深く感謝申し上げます。
皆さまのご理解とご協力により、より良い地域づくりを目指してまいります。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

お問い合わせ


鳩が丘歯科クリニック

〒068-0828 北海道岩見沢市鳩が丘3-1-7
中央バス「幌向線」「緑が丘・鉄北循環線」岩見沢バスターミナルで乗車
「岩見沢市役所前」で下車。バス停から徒歩5分です。

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