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第二回はとなび「その人らしい幸福や健康を、作業の観点から学ぶ」

      2023/05/17


"はとなび" とは?https://hatogaoka-dc.jp/はとなび




講師紹介

ご多忙の中“はとなび”第二回の講師を引き受けてくださったのは、北海道中央労災病院 作業療法士である三宮孝太氏です。

三宮氏の「人生100年時代、その100年を幸せに生きるために、作業を通じてお手伝いをする」という想いが込められた講演内容を、ご紹介させていただきます。

略歴は以下の通りです

【略歴】
日本福祉リハビリテーション学院 作業療法学科卒業
北海道医療大学大学院 リハビリテーション科学研究科
地域医療生活支援学分野 修士課程修了

独立行政法人 労働者健康安全機構 北海道中央労災病院入職
日本大学 作業療法学科 作業療法治療学 非常勤講師
北海道作業療法士協会 老年期新人研修会講師

専門:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
所属学会:日本作業療法士協会、北海道作業療法士協会
     日本摂食・嚥下リハビリテーション学会

賞罰:北海道緩和医療研究会 優秀演題受賞

 

 

 

作業とは

「作業とは何か」と問われたら、あなたはどう答えますか? 一般的には農作業や建設作業、事務作業など仕事に関わるものを連想するのではないでしょうか。
しかし、作業療法の分野における作業の定義は異なっており、三宮氏は次のようにお話ししてくださりました。

「作業とは、個人と文化によって価値と意味が付与された、人が行う生活行為全般」

つまり、仕事も、遊びも、食事も睡眠も、人が行うこと全てが“作業”なのです。

作業療法の分野では作業を、学業や勤務、家事などの「仕事」、食事や睡眠などの「セルフケア」、スポーツや旅行などの「遊び」の三つに大分するそうです。

 

作業の特徴① 作業を行わない人はいない

障害や環境の制約で作業ができない人はいるが、しない人はいない。

つまり、作業とは人間にとって基本的なニーズであると言えます。

マズローによると、人間の欲求は五段階に分けられて、下から順に

「生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求」とされていて、上のものほど高次的な欲求とされています。

そして、これらの欲求を満たすためには、必ず何かしらの作業が必要になるのです。

 

作業の特徴② 人の作業には力(治療的潜在力)がある

人の作業は、ポジティブあるいはネガティブな効果を、人や環境に与えることができる。

(例)
・野球への挑戦が大谷翔平の類稀な身体機能や精神を生み出す
・失業がうつを悪化させて、アイデンティティを喪失させる
・会食は社会的環境を生み出す
・建物を建築することで物理的環境をつくる

人は作業によって発達し、人生の意味を見出していくのだと三宮氏はお話ししてくださりました。

 

生涯にわたる人の作業と発達

  • 「遊び」中心の子供から、「仕事」中心の大人へ、そして、遊びから仕事へと作業のバランスを変えながら生涯発達し続けている

  • 遊びは、人間の操作技能や社会技能を促進することによって、適応技能に役立ち、社会化を促進する

  • 老年期にはレクリエーションからレジャーに変わる

遊びと仕事の発達的連続性が有能性を向上させ、人生の達成へと導く

各ライフステージで作業の種類は異なるものの、それが幸福及び健康にとっては重要な要素なのです。

 

 

作業療法と理学療法の違い

作業療法と理学療法の違いは

まず、作業療法の目的は「患者が日常生活で行う活動(作業)の能力を改善し、社会参加や自己実現を促進すること」です。

 

社会参加や自己実現を目的にしている作業療法で用いられる方法は、次の通りです

方法 1
日常生活動作の訓練 : 日常生活動作の能力を向上させるために機能訓練や実際に活動を行いながら指導。

方法2
気分転換の活動 : ストレスや緊張感を軽減するために、趣味の活動やスポーツなどを提供。

方法3
認知機能の訓練 : 記憶力や注意力、思考力などの認知機能を向上させるためのトレーニングを行う。

方法4
職業訓練 : 職場の雰囲気や業務内容について理解を深めるための訓練を行う。

方法5
その他の活動 : 患者が自分自身の社会的な役割を果たすために必要な活動を提供する。

 

それに対し、理学療法の目的は「身体機能を改善させることによって、患者の生活機能を回復させること」

生活機能の回復を目的にしている理学療法で用いられる方法は、以下の通りです

方法1
運動療法 : 患者の筋力、柔軟性、持久力、バランス感覚などの身体機能を改善を図る

方法2
電気療法 : 電気的な刺激を用いて筋肉の収縮を促進したり、痛みの緩和を図る

方法3
熱療法 : 温熱を用いて筋肉や関節の緊張を和らげ、疼痛を緩和を図る

方法4
冷却療法 : 冷却を用いて、炎症を抑えたり、痛みを緩和を図る

方法5
徒手療法 : 手技を用いて、筋肉や関節の可動域を改善を図る

 

このように、理学療法は筋肉や関節などの身体組織に対して理学的にアプローチするのに対し、作業療法は「身体性・精神性・認知性・社会性」という多角的な視点から、総合的に健康へアプローチするということがわかります。

 

その人らしさとは

その人らしさはどう形成されるかというと、

「その人にとって意味ある作業が、その人らしさと健康を支えている」

うまくやれるという感覚である、作業有能性

やっていてこれが自分だと感じることである、作業同一性

この二つが満たされることで、その人らしさが生まれると三宮氏はお話ししてくださりました。

 

事例

•A氏 80歳代後半 女性
• 独居生活
• うっ血性心不全の診断で入院

• 入院12日目 理学療法が処方され、運動療法を試みたが心不全症状に加え、辻褄の合わない言動があり、せん妄と判断され介入困難となる

• 入院14日目 遷延するせん妄と認知機能低下に対して作業療法が追加となる

  • 筋力低下もあり、立ち上がりにふらつき、歩行は困難

  • 訪室すると過去に逝去された夫に関する悲観言動ばかりで、治療に対して動機付けられることはなかった

 

庭いじりを再開

「庭いじり」の作業をA氏固有の楽しさを意識しながら提供

•認知機能
HDS-R:15→22/30点(境界域の認知機能まで改善)
DBD13:7→0/52点(問題行動なし)

•メンタルヘルス
HADS:不安8→3/21点 ,抑うつ6→2/21点(明らかな精神症状なし)

• 身体機能”
ADL:全般的に介助 BI 40→95/100点(階段昇降のみ軽介助)


このように、庭いじりという作業を再開したことで生活全般に動機づけがされ、約1か月後に行った検査では認知機能・メンタルヘルス・身体機能の全てが向上していました。その結果、ヘルパーやデイサービスを利用し自宅退院することができたそうです。

単なる「庭いじり」、ですが、その人にとっては非常に重要な作業であることがわかります。
“その人らしく生きるために重要な作業は、その人によって違う” ということを認識させられた内容です。

 

 

老化と機能低下

老化に伴い、身体機能と認知機能が低下することで
健常 → フレイル → 要介護
という順にステージが進んでしまいます。

フレイルとは、心と体の働きが弱くなってきた虚弱状態のことです。
フレイルの要因は「身体の虚弱」「こころの虚弱」「社会性の虚弱」の3つとされています。

低下してしまった機能は回復させることが出来ます。しかし、ステージが進行するほど回復が難しくなるため、フレイルの段階で介入を行い、健常に回復させることが重要になります。

 

フレイルドミノを上流で食い止める

そのためには、、身体活動の向上が重要となります。

 

 

身体活動量向上のための問題点

  • 健康日本21(第二次)の最終評価において 身体活動量向上のために、毎日10分の歩行を推奨したが、70歳以上の生活活動量は低下した。運動の遂行だけでは活動量は増えない。

  • 心筋梗塞二次予防に関するガイドラインでも スポーツ参加時間が週1〜2時間の人に比べ、歩行時間(生活を含む)が週5時間以上の人では冠動脈疾患の死亡リスクが50%低い。運動以外の時間にも着目が 必要。

  • 推奨される活動量を行なっている成人は26.2%であり、時々行なっている者が 46.2%、残りの27.6%はほとんど身体的活動を行なっていないのが現状。

  • 運動プログラムも6ヶ月経つと高齢者の半数近くが継続することができて いない。

以上のことから、

「運動・スポーツだけでは身体活動量の問題は解決しない」

ということが言えます。

健康のために運動しよう!と思って行うスポーツを少しやるよりも、歩いて買い物に行ったり家の掃除をしたりという作業の方が、身体活動量としては多くなることがあるということです。

「身体活動量=運動、スポーツ」ではないということを教えていただきました。

 

活動目的の違いがフレイルに与える影響

身体活動のみを行っている人と、身体活動は行っていないが文化活動と地域活動をしている人を比較すると、フレイルになる確率は前者の方が高いということもわかりました。
(吉沢裕世.地域在住高齢者における身体・文化・地域活動の重複実施とフレイルの関係、日本公衛誌.66(9),2019)

 

同じ行為でも、本人の認識によって身体活動は変わる

閉じこもりの高齢者と、そうではない高齢者を比較した研究について、説明してくださりました。

その結論は、

「行為に対する否定的な認識や、他者との接点が希薄であることが身体活動に強く関連する」

つまり、「食事」や「買い物」など、行為としては同じことをしていても、本人がそれに興味を持っているか、どれほど重要だと思っているか、それを自分はうまく出来ると感じているか、などの違いによって身体活動に差が生じるということです。
また、配偶者がいなかったり、グループでの活動が少ない場合にも身体活動が少なくなってしまいます。

 

 

余暇活動と幸福感の関係

  • 余暇時間に外出交流系・外出在宅系活動を行なっている人程、幸福感が高く、健康状況などの満足度も高かった
    → 屋外で他社と交流する活動、屋内で他社と交流する活動が重要


  • 高い幸福度を持つ人は、余暇活動の種目が多彩な人が多かった
    → 一つではなく、色々な趣味を持つことが重要「余暇活動では、自分の家から出ること、仲間の存在、多彩に取り組むことが重要」

 

作業バランスの解釈

作業の動機には、義務と願望という要因があります。

• 義務とは社会的規範や要請といった外的期待によって生じる

• 願望とは 価値や興味、技能、自己効力感といった内的期待によって生じる

• 義務と願望から生じる行為は役割の遂行に影響を与えている

義務の作業ばかり、願望の作業ばかりではなく、バランスが取れた状態の方が健康と言えると教えてくださりました。

 

 

まとめ

1. 健康と幸福の源泉になり得る意味のある作業が重要

2. 老化の機能低下を防ぐとは、“フレイルを何とかする”こと

3. フレイルには身体活動性を高めることが重要

4. 身体活動性を高めるには、行為に対する前向きな認識を高めることが重要

5. 前向きな認識には余暇活動や社会参加への取り組みが必要

 

 

おわりに

この度、鳩が丘歯科クリニックの新たな挑戦である “はとなび” にお力添えいただき、また、素晴らしいご講演をいただいた三宮孝太氏に、深く感謝申し上げます。

地域連携をより一層強めるパートナーとして、今後とも宜しく御願い申し上げます。

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