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第七回はとなび「フレイルに挑む健康長寿のための秘訣:Exercise is Medicine」

      2024/05/27


"はとなび" とは?https://hatogaoka-dc.jp/はとなび



講師紹介

ご多忙の中“はとなび”第七回の講師を引き受けてくださったのは、北海道教育大学岩見沢校元教授で、呼和浩特民俗学院元名誉教授の杉山喜一氏です。

筑波大学大学院修士課程修了後、北海道教育大学岩見沢校スポーツコーチング科学コース教授としてご活躍され、令和6年3月に御退官されています。

杉山氏の専門種目は陸上競技中長距離で、インターハイ1500m優勝 日本学生陸上競技対抗選手権3000M障害3位、箱根駅伝1区 第2位という輝かしい成績を収められてえいます。

この度は、スポーツの専門家の見地から『フレイルに挑む健康長寿の秘策    ~Exercise is Medeicine~』をご講演いただきました。 

当院の「老後の機能低下をなんとかする」を目的とする“はとなび”のまさに指針となるご講演でした。

この記事では、その一部をご紹介させていただきます。

 

実体験からの「Exercise is Medeicine」

引退を機に生活習慣が変容

長らくトップランナーとしてご活躍されていた杉山氏ですが、30代後半になった頃に、現役から学生の指導にシフトされ、ご自身は競技スポーツから退かれました。

そうすると、現役時代は一切食べなかったラーメンを食べたり、飲まなかったお酒を飲んだり、そしてトレーニングをしなくなったりと、生活習慣が変わっていきました。

そして40代後半の健康診断で、生まれて初めて「高血圧・中性脂肪・肥満」で引っかってしまいます。

学生時代から日本のトップで走ってきたアスリートの杉山氏でも、生活習慣が変わることでメタボリックシンドロームになってしまったのです。

機会があり、軽く走ろうとしたマラソンは約10キロでリタイアしてしまいます。

 

ランニング再開で、メタボリックシンドロームが解消

危機感を感じた杉山氏は北海道マラソンへの出場を決意して、食生活を見直し、トレーニングを再開します。

そして52歳のとき、体重を10キロ以上落として臨んだ北海道マラソンは、見事4時間で完走することが出来たのです。

また、この頃には「高血圧・中性脂肪・肥満」のすべてが正常値に戻っていました。

もし健康診断に引っかかったときにランニングを再開していなかったら、50代のうちに病院通いの生活になっていたかもしれないと、杉山氏はお話しくださいました。

杉山氏はこの実体験からも、運動が健康の薬である「Exercise is Medicine」を提唱されています。

 

少子高齢化社会における現状と今後の課題

我が国の医療費負担

少子高齢化が進む日本において、医療費の問題は深刻です。

今回杉山氏は様々なデータから、その解決の糸口を示してくださいました。

 

年齢階級別の一人当たり医療費

まず、国民一人当たりの医療費は、後期高齢者と言われる75歳から飛躍的に大きくなっていることがわかります。

 

 

 

年齢階層別の一人当たり医療費負担額

次に、国民一人当たりの医療費負担額は、40〜50代において大きくなっており、70代以降で小さくなっています。

現役世代が医療費の多くを負担していることがわかります。

少子化により現役世代は減り続け、高齢化により70代以降が増えていくことから、医療費の厳しい現状が見えてきます。

 

 

高齢者医療費の伸びの深刻度

2025年の医療費予測をみてみます。

下のグラフは、医療費の総額と、その内訳を3つの年代別で表したものです。

3つの年代は、「0~64歳・前期高齢(65~74歳)・後期高齢者(75歳~)」です。

2025年の予測を見ると、2020年と比較して総医療費は9兆円増加し、内訳では後期高齢者(75歳以上)の構成割合が5%大きくなっています。

平均寿命が伸び、団塊世代が後期高齢者・80代・90代となっていくことを考えると、このままでは医療費問題は深刻度を増してしまいます。

このことから、75歳以上の医療費をいかに軽減していくかが、今後の大きな課題だとわかります。

 

 

後期高齢者医療制度の医療費の財源内訳

では年々増加している医療費は誰が賄っているのか、その内訳をみてみましょう。

下のグラフの通り、「税金」と「現役世代からの支援金」が8割以上を占めています。

高齢者を支えてきた現役世代が高齢者になり、病気になった時は若者のお世話になる。
それで良いのだろうか、自分たちに出来ることは何だろうか、と今年前期高齢者の年齢になられる杉山氏は疑問を投げかけます。

 

 

 

医療費の内訳 〜どんな病気が多いか〜

医療費がどんな病気に使われているかを見てみると、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が34.5%、骨折や関節の病気などの老化に伴う疾患が15.6%、精神・神経の疾患が10.9%、肺炎などの器官系の疾患が13.1%、その他感染症などが25.9%となっています。

このように、生活習慣病が総医療費の実に1/3以上を占めています。

多額の医療費を要している生活習慣病を改善・克服して、健康寿命を延ばしていくことが、医療費問題の解決につながると杉山氏はお話しくださいました。

 

フレイルに挑む

フレイルとは

もともと「か弱さ」や「こわれやすさ」を意味する言葉で、こわれやすいものは大切に扱う必要があります。通常とは別の対応が必要です。

フレイル高齢者とは「こわれやすい高齢者」。
すなわち健康寿命を失いかけている高齢者であり、健康でいるためにはそれまでとは異なる配慮が必要な人々なのです。

 

日本人の寿命と健康寿命と要介護期間

日本は世界でも有数の長寿大国として知られています。

その平均寿命は、男性が81.47歳、女性が87.57歳です。

健康寿命も見てみましょう。健康寿命とは、人が健康な状態で生活を送ることができる期間を指します。つまり、病気や障害による機能の低下や制約がない状態で、日常生活や社会参加を維持できる期間です。

日本の平均健康寿命は、男性が約72歳、女性が約75歳と言われています。こちらも世界トップの水準です。

そして、寿命と健康寿命との差が、要介護期間となります。
日本の平均要介護期間は、男性が(81-72=)9年間、女性が(87-74=)12年間ということになります。

平均寿命、健康寿命はともに世界トップである日本ですが、要介護期間の短さは世界でそこまで上位ではありません。

要介護状態は、不自由が多く、自分らしく生活することが難しくなってしまいます。また医療費においても負担が増えてしまいます。

そして、要介護期間を短くするためには、健康寿命を伸ばすことが重要なのです。

 

健康寿命を伸ばすために

生活改善の効果が出る期間

健康寿命を伸ばすために出来ることは、
・フレイルを予防すること
・フレイルになってしまったら生活習慣を改善してフレイル状態から脱却すること
この二つです。

というのは、もし一度要介護状態になってしまうと、そこから回復することは極めて難しいからです。

健康とフレイルは可逆的ですが、フレイルと要介護は不可逆なのです。

そのため、フレイルは要介護の黄色信号と理解し、健康状態を戻せるラストチャンスを逃さないという気持ちで、生活の改善をすることが重要です。

 

 

生活習慣病予防

ここで、主な生活習慣病と言われる病気の原因を見てみましょう

がん

喫煙や大量の飲酒、不適切な食事、運動不足 といった生活習慣や、細菌・ウイルスなどの感染が要因と言われています

しかし、がんの原因はわかっていないものも多く、まれに遺伝が関与しているケースもあります

 

高血圧

腎臓の基礎疾患や内分泌疾患による場合や、運動不足肥満、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などが原因と言われています

 

糖尿病

遺伝的な体質に過食(特に高脂肪食)、運動不足肥満、ストレスなどの生活習慣や加齢といった要因が加わり発症すると言われています

 

脳血管疾患

高血圧、動脈硬化、喫煙等が誘因となる最大の危険因子と言われています

その他、運動不足や多量の飲酒、ストレス、睡眠不足などの生活習慣が脳血管疾患の引き金となりえます

 

心疾患

主な原因は、動脈硬化です。その原因はさまざまなで、危険因子として高血圧、脂質異常症、肥満、ストレス、喫煙、糖尿病などがあります

 

運動による薬と同等の効果

主な生活習慣病の原因について見てきましたが、ほぼ全てに該当するのが運動不足です。

運動が不足しているなら、運動すれば良い。と杉山氏は言います。

もちろん人によって様々な事情がありますが、「運動不足」というのは他の病気の原因と比べ、比較的単純に解決できるのかもしれません。

そして、運動の効果は多岐にわたります。

 

有酸素運動による血圧の降圧効果

最大酸素摂取量の約50%に相当するマイルドな運動強度の有酸素運動を1回に60分間、週3回づつ20週間実施

10週後において体力テストの向上に伴って血圧(収縮期・平均血圧)も有意に降圧した。

→厚生省の有効降圧基準 (収縮期圧20mmHg以上,拡張期圧10mmHg以上の降圧)に照らすと10週間では50%の患者,20週までには78%の患者に有効

→この数字は実は現在市販されているあらゆる降圧薬の有効率とほぼ同じ

 

運動による動脈硬化の改善

週に1回の運動教室での35~50分間 (約3.7 km)のウォーキング+週2~4回の同程度速度での自主的ウォーキング(約45分間)

→動脈硬化は、運動群において運動教室終了直後およびその6ヵ月後に改善(動脈スティフネスの低下)

動脈スティフネスは低下は、血管内皮機能の改善も期待される

 

高齢者を対象としたLT強度の運動によるコレステロールへの影響

40~60%VO2maxの運動(会話ができるくらいのペースでのランニング)を1日20分以上、それを週3回以上行うと

→HDL-c(善玉コレステロール)やTC(総コレステロール)/HDL-cに良好な影響を及ぼすことがわかっています

ただし、運動中止により短期間で初期レベルに戻る可能性があるため、LT強度のトレーニングの継続が重要になります

 

筋力トレーニングが糖尿病に及ぼす効果

(2型糖尿病患者でも健常者でも)運動によりインスリン感受性が向上し、血中糖質成分が改善することが報告されています。

筋力トレーニング後に筋肥大が生じなくても、筋のインスリンアクションが改善する

→筋肉の量が増えなくても、質が良くなることで糖尿病の予防効果が期待されるのです

 

筋力トレーニングが生活機能に好影響

介護予防や寝たきり予防を目的とした筋力向上のためにも、筋力トレーニングは推奨されます。

筋力や筋量を高く維持すること自体が生活習慣病の予防になります

筋力UPのためには、筋肉を適度に使うことが重要です。
使わないと萎縮し、使いすぎると損傷するため、正しい運動習慣を身につけることがフレイル予防・フレイル脱却には必要なのです。

 

 

ストレス解消にも

運動は、ストレス解消にも効果的です。

予備心拍数の70~85% の強度のウォーキング もしくはジョギング30 分間を、週3回行った研究では、

→16 週間の介入により、軽症・中等症・重症全ての群でうつ症状が改善、6 割以上が大うつ病性障害の診断基準から逸脱したという結果となりました

この研究は、運動が薬の投与と同等のうつ改善効果があることを示しました。

他にも多くの先行研究で、運動がうつ症状の改善が報告されています

運動の種類・頻度については一定した見解がほとんどありませんが、週に 3 回以上の運動が望まれ,また強度または中等度のものを一定時間継続することが推奨されると言われています

 

 

運動により分泌される「幸せホルモン」や「神経伝達物質」

運動することで、以下のようなホルモンが分泌されることがわかっており、脳にも良い影響を与えます

エンドルフィン
脳内麻薬の一種で、多幸感をもたらす幸せホルモンです。
ランニングで起こるランナーズハイと呼ばれる爽快感や、ランニング後の穏やかな気持ちはエンドルフィンによるものと考えられています。
このホルモンは、食事・運動など、脳が「ご褒美」と感じる活動の際に増加します

セロトニン
精神を安定させる神経伝達物質で、低下すると抑うつを引き起こします。
睡眠や食欲、学習、記憶などにも影響します。運動により良く眠れて、食欲が湧き、勉強の集中力があがることが期待できます。

ドーパミン
快楽をもたらす神経伝達物質で、脳が“ご褒美”を感じます。ストレスで低下してしまうことがわかっています。
依存症の原因になりますが、運動による分泌で健康的に脳へのご褒美を与えることが出来ます。

 

ただし、運動のし過ぎは禁物

運動のしすぎにより、怪我や、エネルギー枯渇のリスクは高まります

運動も

薬と同様に、適量を行うことが大切だと杉山氏はお話ししてくださいました。

 

ヘルスリテラシーを高める!

ヘルスリテラシー(Health Literacy)とは、健康情報を理解し、活用する能力を指します。

ヘルスリテラシーが向上し、予防の重要性が認知されることで生活習慣が改善し、健康寿命が伸びる。健康は自分らしく生きるためのベースであり、幸せのベースです。
そして、結果として医療費が削減される。
このようなシナリオが、今の日本には必要なのではないでしょうか。

地域の様々な資源を活用

病院や歯科医院などの医療機関、大学や高校などの教育機関、フィットネスジムやクラブなどの民間、そして自治体が協働し、市民のヘルスリテラシーの向上に取り組むことが重要だとお話くださいました。

 

終わりに

フレイル予防の4つの柱

今回は運動に焦点を当てた内容でしたが、フレイル予防には4つの柱があるといいます。

1つ目が、今回の内容である「運動実践で体力作り」

2つ目が、十分な栄養素を摂ること「低栄養予防」

3つ目が、お口から美味しく食べること「お口と歯の健康」

4つ目が、人との関わり「外出と交流(社会参加)」

 

時間の都合上、全てをお話しいただくことは叶いませんでしたが、またの機会に是非ご講演をしていただきたく存じます。

 

謝辞

杉山氏の「フレイルに挑む健康長寿のための秘策:Exercise is Medecine!」のご講演の一部をご紹介させていただきました。

地域連携をより一層強めるパートナーとして、今後とも宜しく御願い申し上げます。

この度、鳩が丘歯科クリニックの新たな挑戦である “はとなび” にお力添えいただき、また、素晴らしいご講演をいただいた杉山喜一氏に、深く感謝申し上げます。

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〒068-0828 北海道岩見沢市鳩が丘3-1-7
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「岩見沢市役所前」で下車。バス停から徒歩5分です。

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