第九回はとなび「 生活期の理学療法について ~住み慣れたまちで元気に暮らすために~」
2024/10/10
"はとなび" とは?https://hatogaoka-dc.jp/はとなび
講師紹介
ご多忙の中“はとなび”第九回の講師を引き受けてくださったのは、介護老人保健施設 北翔館の理学療法士である後藤さつき氏です。
「 生活期の理学療法について ~住み慣れたまちで元気に暮らすために~」というテーマでご講演いただきました。
この記事ではその一部をご紹介させていただきます。
後藤氏は岩見沢出身で、札幌医科大学 保健医療学部 理学療法学科を卒業後、岩見沢整形外科内科病院(現:岩見沢北翔会病院)入職されます。その後、北翔館に異動となり現在に至ります。
昨年9月には岩見沢初となる訪問リハビリが開設され、現在責任者を務めていらっしゃいます。
地域理学療法の認定理学療法士、そして認知症ケア専門士等の資格を保有されており、今回のテーマである「住み慣れたまちで元気に暮らすため」の支援のプロフェッショナルです。
また、北海道リハビリテーション専門職協会(HARP)に所属されており、南空知地区長、岩見沢市主担当として活動されています。
北海道リハビリテーション専門職協会(略称:HARP)は、北海道内で活動するリハビリテーション専門職を対象とした団体です。この協会は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、リハビリテーション分野の専門職が集まり、相互の連携と情報交換を促進し、専門職としての質の向上を目指しています。
令和4年3月31日時点での各会員数は以下の通りです。
北海道理学療法士会 6,779名
北海道作業療法士会 3,170名
北海道言語聴覚士会 646名
理学療法士とは
理学療法士は、病気やけが、高齢、障害などによって運動機能が低下した人々に対して、運動機能の維持や改善を目指して治療を行う専門家です。理学療法は、運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いることで、患者の身体機能の回復や生活の質の向上を図ります。
「理学療法士及び作業療法士法」第2条では、理学療法士の役割について次のように定義しています。「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、また電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること」。
このように、理学療法士は多様な治療方法を駆使し、患者の自立を支援し、日常生活の質を高めるために貢献しています。
リハビリテーションの語源
リハビリテーション(英語: rehabilitation)の語源は、ラテン語の「re(再び)」と「habilis(適した)」に由来しています。これらの言葉が組み合わさることで、「再び適した状態になること」や「本来あるべき状態への回復」という意味を持ちます。このように、リハビリテーションは失われた機能や能力を取り戻し、再び日常生活を快適に送ることを目指す過程を表しています。
また、元々機能を獲得していない場合には、「ハビリテーション(habilitation)」という言葉が使われます。
ハビリテーションは、「その人がもっている能力を可能な限り伸ばし、社会に適応できるよう支援すること」を意味します。
理学療法の対象
理学療法の対象は、運動機能が低下したすべての人々です。その原因は問いません。病気やけが、高齢による体力の低下、手術後の回復など、さまざまな理由で運動機能が低下した方が対象となります。
近年では、高齢者の予防対策としての運動機能低下の予防、メタボリックシンドロームの予防、さらにはスポーツ分野でのパフォーマンス向上など、健康な人々に対する理学療法の適用も広がっています。さらに、理学療法士はその専門性を活かし、福祉用具の適用相談や住宅改修相談など、個々の生活環境に応じた支援も行っています。
理学療法の目指すもの
理学療法の直接的な目的は、運動機能の回復です。しかし、その先には日常生活動作(ADL)の改善があり、最終的にはQOL(生活の質)の向上を目指します。病気やけが、高齢などさまざまな原因で寝返り、起き上がり、座る、立ち上がる、歩くといった基本的な動作が難しくなると、自力でトイレに行けなくなったり、着替えや食事ができなくなったり、外出が難しくなるなど、日常生活に多くの不便が生じます。
こうした動作を誰の手も借りずに行いたいと願うのは、ごく自然なことです。そのため、日常生活動作の改善はQOL向上にとって欠かせない要素です。
理学療法では、たとえ病気や障害があっても、住み慣れた街で自分らしく暮らしたいという一人ひとりの思いを大切にし、その実現をサポートします。
理学療法士は、患者さんの「自分らしい生活」を取り戻すお手伝いをする職業なのです。
理学療法を受ける方法
理学療法を受けるための方法は、状況に応じてさまざまです。以下のケースごとに方法を紹介します。
入院中・通院中の方
病院や診療所(医院、クリニック)に入院・通院中の場合、まずは主治医や担当医にご相談ください。医師が理学療法の必要性を判断し、必要であれば理学療法科(リハビリテーション科)で治療を受けることができます。
ご自宅で生活する高齢者の方
手足に障害を抱えながらもご自宅で生活し、運動機能の維持・向上や人との交流、日中の余暇活動、住宅改修を希望される方は、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションサービスの利用が考えられます。
この場合、かかりつけ医やケアマネージャー、市町村の介護保険課にご相談ください。
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https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/kurashi/kenko_iryo_fukushi/koreisha_kaigo/4/2/6089.html
高齢で身体機能の低下が心配な方
身体機能の低下を未然に防ぐための介護予防事業に関心がある場合、またはその適用を受けたい場合は、お住まいの市町村の老人保健担当課、または地域包括支援センターにお問い合わせください。
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https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/kurashi/kenko_iryo_fukushi/koreisha_kaigo/4/2/6089.html
お子様の発達が心配な方
お子様の発達について心配がある場合は、乳幼児健診で相談したり、市町村の保健センターや保健師にご相談ください。必要に応じて、理学療法が紹介されることがあります。
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https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/soshiki/kodomoka/kosodate/8282.html
障害をお持ちの方
障害者入所施設や通所(通園)施設での理学療法をご希望の場合は、福祉事務所にご相談ください。
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https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/kurashi/kenko_iryo_fukushi/shogaishashien/index.html
地域理学療法とは
地域理学療法は、人々が地域社会で主体的に生活できるよう、動作や活動に多面的に働きかけることを目的とした学問です。地域のニーズに応じた理学療法を提供し、健康と生活の質の向上を支援します。具体的には、以下の三つの領域に基づいて展開されます。
1. 老年学を基盤とする領域
この領域では、高齢者の健康と機能の維持・向上に焦点を当てます。
加齢に伴う身体機能の評価や、それに基づいた理学療法の提供、介護予防、転倒予防などが含まれます。高齢者ができるだけ自立して生活できるよう、身体機能を維持するための支援を行います。
2. 保健活動を基盤とする領域
健康増進や生活習慣病予防、高齢者や女性の健康管理を目的とした取り組みがこの領域に含まれます。
集団の健康状態を評価し、地域全体の健康づくりを支援するシステムを構築します。地域全体の健康意識を高め、予防医療の重要性を伝える役割を担います。
3. 在宅支援領域
在宅支援領域では、以下のような活動が行われます。
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通所リハビリテーション:リハビリテーション施設に通い、日常生活動作の改善や社会交流を促進します。
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施設リハビリテーション:長期的なケアが必要な方々に対し、施設内でのリハビリを提供し、生活の質を維持・向上させます。
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就労・就学・社会参加支援:障害や病気を持つ人々が仕事や学校、スポーツなどに参加できるよう、支援を行います。また、彼らの権利を擁護し、社会の一員としての参加を促進します。
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制度的支援:医療・介護・福祉制度や地域ケアシステムの中で活動し、地域全体のケア体制の向上に貢献します。
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生活環境整備:住環境の評価と整備、福祉用具の提供、そして住みやすいまちづくりのための政策提言などを行います。これにより、誰もが安全で快適に暮らせる環境を整えることを目指します。
地域理学療法は、個人の生活の質を高めるだけでなく、地域全体の健康と福祉を向上させるための重要な役割を果たしています。理学療法士は、人々が地域社会で自分らしく生活できるよう支援し、地域の健康づくりに貢献する職業です。
高齢リハビリの3つのモデル
高齢者リハビリテーションでは、高齢者の健康と生活の質を向上させるために、特性に応じたリハビリテーションモデルが用いられます。
「脳卒中モデル」、「廃用症候群モデル」、「認知症モデル」の3つの代表的なモデルについて説明します。
1. 脳卒中モデル
脳卒中モデルは、脳梗塞や脳出血、大腿骨の頸部骨折などで急激に生活機能が低下した方が、急性期・回復期を経て地域リハビリテーションに入っていくような流れをとるモデルです。
脳卒中モデルでは、早期リハビリテーションの開始が重要とされ、急性期から回復期、維持期までの一貫したケアが提供されます。